サイン入り
記録44号
サイン入
「記録」44号出来上がりました。コロナ・ウイルスの影響もあり、少々遅くなってしまいました。
外出禁止令が出て、2日ほどは自室でウロウロしていましたが、テレ・ワークなどという言葉が出始めて、そういうことならば、こちらの仕事はフット・ワークだよな、というわけで連日嫌いなマスクをしてバスに乗り電車に乗って、中野を始め中央線沿線の各駅をカメラを手にうろつき歩いていました。街々はさすがに人気が薄かったし、店々もシャッターが大半閉まって、一見映画のオープン・セットを見る思いでしたが、これはこれで良しとパチクリパチクリと写し廻ったわけです。そしてつらつら思ったことは、何か大事が起きると、世の中手のひらを返すごとく別の景色になってしまうわけね、と実感をするというか改めて肝に銘じた次第でした。日頃、都会の雑踏にまぎれ込んでチャカチャカ写し廻っていたぼくとしては、どこか釈然としない気妙さも一瞬ありましたが、すぐにいやこれはこれでよし、いまこれも写しておかねばダメだろうなどとカメラマン根性というか、ぼくの方も心の手のひらを返したわけです。つまり日常性からふと異常性が垣間見えたように感応できたということでしょうか。これら写したイメージが、いつどういう形でお見せできるものかどうかが分かりませんが、「記録」誌本号の写真は、コロナ騒動直前までに写されたイメージでまとめたものです。
-森山大道 あとがきより
- 判型
- 280 x 210 mm
- 製本
- ソフトカバー
- 頁数
- 132頁
- 発行年
- 2020.7
- 出版社
- Akio Nagasawa Publishing
森山大道
Daido MORIYAMA
1938年大阪生まれ。写真家・岩宮武二、細江英公のアシスタントを経て1964年に独立。写真雑誌などで作品を発表し続け、1967年「にっぽん劇場」で日本写真批評家協会新人賞受賞。1968-70年には写真同人誌『プロヴォーク』に参加、ハイコントラストや粗粒子画面の作風は“アレ・ブレ・ボケ”と形容され、写真界に衝撃を与える。
ニューヨーク・メトロポリタン美術館やパリ・カルティエ現代美術財団で個展を開催するなど世界的評価も高く、2012年にはニューヨークの国際写真センター(ICP)が主催する第28回インフィニティ賞生涯功績部門を日本人として初受賞。2012年、ウィリアム・クラインとの二人展「William Klein + Daido Moriyama」がロンドンのテート・モダンで開催され、2人の競演は世界を席巻した。2016年、パリ・カルティエ現代美術財団にて2度目の個展「DAIDO TOKYO」展を開催。2018年、フランス政府より芸術文化勲章「シュヴァリエ」が授与された。2019年、ハッセルブラッド財団国際写真賞受賞。
2021年、パリのMEP(ヨーロッパ写真美術館)にて東松照明との二人展「Tokyo: 森山大道+東松照明」を開催。2022年、アムステルダムやローマ、サンパウロ、北京で個展を開催するなど、現在も精力的に活動を行っている。