この度、Akio Nagasawa Gallery Aoyamaでは、小村希史『地平線 Horizon』展を2期に分けて開催いたします。2019年に開催した『Diamond』展に続く、2回目の展覧会となります。

　小村希史は、“儚さや不完全さの美”を表現し続けている作家です。絵画そのものを物質としてとらえ、描く行為という身体性も、作品を構成する一要素として表現に組み込んでいます。「取り去る、差し引く」という意味の“Subtract”という手法を用いて、積み上げられた油絵具を荒々しく、あるいは精密に削りとって描いています。2019年の展覧会『Diamond』では、色彩を「差し引き」、キャンバス地の白を「光」として、鉱物のカッティングラインのように斜線を多用して構成していました。 　本展『地平線 Horizon』では、画面に地平線に見える線が存在し、その上部と下部とでは異なる印象の絵画が展開されています。この作品に存在している境界は、差異があることで現れてくる、体感としての境界線です。 　これまで、世界には様々な「分断」が存在し続けてきました。2019年末から始まった新型コロナウィルスの感染拡大は、さらに新たな「分断」を私たちにもたらしています。しかし、私たちを分断する線というものは物理的には存在していません。心の中で線を引き、その線もまた現れてはすぐに消えてしまうような儚いものであったりするのです。別の見方をすれば、これまで通り世界が分断されているその一方で、新しい世界では、これらの分断が消滅していっている事象を目の当たりにすることもあるのではないでしょうか。 　現れては消える儚い境界線を、そして分断されてもまた繋ぎ合う世界を予見して表現された小村希史の『地平線 Horizon』を、ぜひこの機会にご高覧ください。

　本展では、新作ペインティング、作品集「地平線 Horizon」(2021年、自費出版)、「小裂絵 KOGIRE」(2021年、自費出版)を会場とオンラインショップにて限定販売いたします。Tシャツは会場のみで販売いたします。

第一期2021年3月4日（木） - 3月27日（土）
第二期2021年4月1日（木） - 4月24日（土）