leave-taking
※2月11日(金)は祝日のため休廊となります。
開廊時間|火〜土 11:00–19:00 (土 13:00–14:00 CLOSED)
休廊日|日・月・祝日
※12月28日(火)〜1月8日(土)は冬期休廊となります。
この度、Akio Nagasawa Gallery Ginza は、片山真理新作個展「leave-taking」を開催致します。
片山真理は1987年群馬県出身。2012年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。自らの身体を模した手縫いのオブジェ、ペインティング、コラージュのほか、それらの作品を用いて細部まで演出を施したセルフポートレイトなど、多彩な作品を制作しています。
近年の主な展示に、2021年「Home Again」(ヨーロッパ写真美術館、パリ、フランス)、「リバーシブルな未来 日本・オーストラリアの現代写真」(東京都写真美術館、東京、日本)、2019年「第58回ヴェネチア・ビエンナーレ」(ヴェネチア、イタリア)、「Broken Heart」(White Rainbow、ロンドン、イギリス)など多数。2019年第35回写真の町東川賞新人作家賞、2020年第45回木村伊兵衛写真賞など数々の受賞歴があります。
本展では、全て新作となる「leave-taking」シリーズより作品を展覧致します。また、本展開催にあわせ、作品集『Mother River Homing』をAkio Nagasawa Publishingより刊行致します。
是非ご高覧ください。
《作家ステートメント》
「正しい身体」から消失の過程まで。
三部作と呼んでいる『shadow puppet』、『bystander』、『on the way home』の撮影から約5年経った。
その間、出産や育児、制作の拠点を定め、生まれて初めてアトリエを持つなど生活や環境が大きく様変わりした。
その変化は制作に影響しているように思える。
子がハイハイしだしたら危ないからと針と糸を片付け、『cannot turn the clock back - gift』を最後にオブジェ制作からは遠ざかっていた。
その代わり故郷近くの足尾銅山や渡良瀬川周辺、出張先のホテルでも撮影するようになり、
信頼できる技術者との出会いもフィルム撮影に拍車をかけた。
同時に、海外での初個展や国際展の参加、写真集出版など、外に向かうことや、過去作と向き合う機会が多くなり、
「身体あっての制作」という自覚と希望をもちつつ、外に出れば出るほどその「身体」に求められる「正しさ」の逆風を強く感じるようになった。
自己を写す鏡としての「あなた」や「社会」に、同じく鏡を内包するカメラを向けることで生まれる「合わせ鏡」。
その永遠性に真理が在るような気がする。
世の中は「正しい身体」にフィットするようできている。わたしにとってのオブジェは、そんな「正しい身体」の代用品だった。
オブジェの「作品」という存在価値は「正しい身体」のそれと等しい。
だから私はいつまでも写真の中で「作品」ではなくマネキンでいられたのだ。
『leave-taking #010』において、長時間露光の中ゆっくりと部屋を満たしていくような光は、そんなオブジェに対する飽和した愛と憎しみのようにみえる。
しかしこの5年の生活でオブジェはあまり頼りにならなかった。(オブジェは制作してくれないし、光熱費も払ってくれないからね!)
どんな出来事も、身体あっての遭遇だろう。
生きるにも死ぬにも、正しさや間違えは関係なく、この身一つが全てだったのだ。
光と光のぶつかり合いで、その間に立つものが消えてしまうグレア現象(蒸発現象ともいう)というものがあるが、それも合わせ鏡に似ている。
まぶしい「正しい身体」を手放して身軽になれば、光も真っ直ぐ届くだろうか。
片山真理
アーティスト
片山真理
Mari KATAYAMA
1987年群馬県出身。2012年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程修了。先天性の四肢疾患により9歳の時に両足を切断。身体を模った手縫いのオブジェや立体作品、装飾を施した義足を使用しセルフポートレート作品を制作。自身の輪郭をなぞれば、他者に続き、小さな暮らしから社会、世界へ、糸と針はパッチワークのように様々な境界線を縫い繋げていく。
作品制作の他に「ハイヒールプロジェクト」として特注の義足用ハイヒールを装着し歌手、モデル、講演など多岐に渡り活動している。『選択する自由』獲得のためならアートも身体もどんなものでも利用するのがハイヒールプロジェクトのモットー。
主な展示に 2021年「leave-taking」(Akio Nagasawa Gallery、東京、日本)、「Home Again」(Maison Européenne de la Photographie、パリ、フランス)、「リバーシブルな未来 日本・オーストラリアの現代写真」(東京都写真美術館、東京、日本)、「第45回木村伊兵衛写真賞受賞作品展」(ニコンプラザ東京、東京、日本)、2019年「Mari Katayama」(ミシガン大学美術館 Irving Stenn, Jr. Family Gallery、アナーバー、アメリカ)、「第58回ヴェネチア・ビエンナーレ」(ヴェネチア、イタリア)、「Broken Heart」(White Rainbow、ロンドン、イギリス)、2017 年「無垢と経験の写真 日本の新進作家 vol.14」(東京都写真美術館、東京、日本)、「帰途-on the way home-」(群馬県立近代美術館、群馬、日本)、2016 年「六本木クロッシング 2016 展:僕の身体、あなたの声」(森美術館、東京、日本)、2013 年「あいちトリエンナーレ 2013」(納屋橋会場、愛知、日本)など。主な出版物に『Mother River Homing』(Akio Nagasawa Publishing、2021)『GIFT』(United Vagabonds、2019)がある。
2005年に群馬青年ビエンナーレ奨励賞、2012年アートアワードトーキョー丸の内2012グランプリ、2019年第35回写真の町東川賞新人作家賞、2020年第45回木村伊兵衛写真賞を受賞。多数の個展を開催し、あいちトリエンナーレ2013、六本木クロッシング2016、ヴェネチア・ビエンナーレ2019国際企画展などさまざまな国内外のグループ展に参加。
出版物
Mother River Homing
『shadow puppet』、『bystander』、『on the way home』の3部作シリーズをまとめた写真集。
片山真理「leave-taking」展の会期中(〜2022/2/19)、特別価格で販売致します。
写真というのは(ひぇー!なんということを言っているんだ自分は!?)本当に不思議なものだと思う。私は、写真に写っているものは全て嘘っぱちだから信じないようにしているけれど、被写体とカメラマン(ないしはカメラを設置した者)との「事実」だけは、確かに存在すると信じている。「事実」は、身体にとても近い針や絵筆による親密さとは違い、どんなに抱き合っても1つにはなれない身体と身体のような、突き飛ばされたような、孤独や孤高と似ている。その「事実」とはなんだろう。フィルムが現像され、プリントされたときや、デジタルデータにもある。カメラ、そして時間や工程、時には他者を介さねばならない過程に理由がある気がする。そして、それらを重ねるほど「事実」は強くなる。「わたしたちはたしかにいた」と感じる。だから私は友達を撮り、写真作品やオブジェの素材として『bystander』へ登場させたのだと思う。
-片山真理 あとがきより
MARI KATAYAMA
フランスのFondation Antoine de Galbertより出版された片山真理の作品集。作家自身によるテキストも収録しています。
通常サインは入っておりませんが、Akio Nagasawa Galleryでは作家サイン入りにて販売いたします。
※フランスからの輸送時に、多少のダメージがある場合がございます。書籍の中身には問題ございません。