展覧会 No.038
『 物草拾遺 』

アーティスト

1940年東京都生まれ。62年に東京綜合写真専門学校を卒業。67年より寺山修司が主宰する演劇実験室「天井桟敷」の専属カメラマンとなる。71年よりフリーランスの写真家として活動を開始。76年、『風姿花伝』にて日本写真協会新人賞を受賞し、一躍注目を浴びる。
その後、83年に写真展「物草拾遺」等により日本写真協会年度賞を受賞。85年に写真展「日常の断片」等により第1回東川賞国内作家賞を、97年に写真集『人間の記憶』により第16回土門拳賞など受賞多数。2013年には東京都写真美術館にて大規模な回顧展「凪の片」が開催された。
現実と非現実の間に漂う一瞬を捉えたその作品は近年とみに海外での評価も高い。
主な作品集に『風姿花伝』(78)、『わが東京100』(79)、『紅い花』(2000)、『私家版・無名の男女』(2013)他。Akio Nagasawa Publishingより『風姿花伝(完全版)』(2012)、『一九七五 三浦三崎』(2012)、『Early Works 1970-1975』(2013)、『Childhood Days』(2015)、『Rei』(2015)、『GANKOTOSHI』(2019)、『NEW LIFE』(2020)、『無名の男女(東京1976-78年)』(2021)、『関東風譚』(2022)、『物草拾遺』(2013)など多数。

出版物

物草拾遺

$57.06
在庫有り

この作品集は、1980年から2年間『日本カメラ』で連載された48点に、82年開催の写真展で発表された13点を加えた「物草拾遺」シリーズの全体像です。

写真の画題を考えるというのは厄介なもので、いいタイトルなぞなかなか思い浮かぶものではない。とくに私の写真などは、日本の農民問題とか公害病とかはっきりした主題性をもつものではないから、早い話が題なんかどうだっていいのである。でも題がないのはなんだか顔がない人間みたいでへんだから無い知恵を絞って考えるわけであるが、いま私がやっているのは、人間の愛憎とか哀歓とかいった感情から極力遠去かって、人間でも物体でも、なるべく無機的なモノ自体としてつかまえて表現してみたいということなのである。そこから一流の思想や哲学が生まれてくるとも思えないが、一切の思い入れや憶測をまじえずにモノに対すると一体どういうことになるか、そのへんのところを手さぐりにさぐってみたいというのが私の考えなのだ。そのモノもなるべく日常的、ありきたり、どこにでも転がっているもののほうがいい。それも私は拾って歩くのである。
-須田一政『日本カメラ』(日本カメラ社、1980年12月号)「今月の口絵」より(一部抜粋)