AOYAMA

記録58号

森山大道

2024年10月3日(木) - 11月30日(土)
開廊時間|木〜土 11:00–13:00, 14:00–19:00
休廊日|日〜水・祝日
※10月17日、18日は臨時休廊とさせていただきます。

プレスリリース(PDF)

この度、Akio Nagasawa Gallery Aoyamaは、森山大道個展「記録58号」を開催致します。
本展では、森山の『記録』シリーズ最新刊である58号より作品を展覧致します。また、これまで刊行された全ての『記録』(在庫がある号のみ)を販売致します。常に現在進行形の森山大道の活動を体感ください。

 

(前略)かつて、と言っても遠い昔のはなしであるが、当時よくぼくは、同じ逗子の町に住んでいた写友・中平卓馬と連日のように横須賀線に乗って、横浜経由の東横線で一緒に東京へと出掛けていた。そんな乗り換えのとき、ふとよく二人で横浜駅から桜木町あたりまで、単なる気まぐれのままふらついて、コーヒーなど飲みにカフェに入りびたったりしていた。そんなときぼくが、オレこの辺少し撮りたいかな?と彼に話しかけても、当時中平は、深夜の川崎港近辺の景色以外には全く興味を示さず、コーヒーを飲んでいても、やれゴダールがどうしたこうしただの、その頃彼がお気に入りだった歌手のミーナ・マッツィーニの唄を、ああだのこうだの、そんなことばかり嬉しそうに話してばかりだった。
それも、現在にして思えば、一緒に行った深夜の川崎港での撮り狂っていた彼の思い出と、その後横浜美術館に於ける彼の個展時の横浜での中平卓馬の姿以外には、ぼくに横浜での思い出は見つからない。
横浜のいまの景色は、ぼくにとっては少々気掛りである。折り折りに撮り続けて行こうかと思っている。

- 森山大道 あとがきより(抜粋)

アーティスト

1938年大阪生まれ。写真家・岩宮武二、細江英公のアシスタントを経て1964年に独立。写真雑誌などで作品を発表し続け、1967年「にっぽん劇場」で日本写真批評家協会新人賞受賞。1968-70年には写真同人誌『プロヴォーク』に参加、ハイコントラストや粗粒子画面の作風は“アレ・ブレ・ボケ”と形容され、写真界に衝撃を与える。
ニューヨーク・メトロポリタン美術館やパリ・カルティエ現代美術財団で個展を開催するなど世界的評価も高く、2012年にはニューヨークの国際写真センター(ICP)が主催する第28回インフィニティ賞生涯功績部門を日本人として初受賞。2012年、ウィリアム・クラインとの二人展「William Klein + Daido Moriyama」がロンドンのテート・モダンで開催され、2人の競演は世界を席巻した。2016年、パリ・カルティエ現代美術財団にて2度目の個展「DAIDO TOKYO」展を開催。2018年、フランス政府より芸術文化勲章「シュヴァリエ」が授与された。2019年、ハッセルブラッド財団国際写真賞受賞。
2021年、パリのMEP(ヨーロッパ写真美術館)にて東松照明との二人展「Tokyo: 森山大道+東松照明」を開催。2022年、アムステルダムやローマ、サンパウロ、北京で個展を開催するなど、現在も精力的に活動を行っている。

出版物

記録58号

$21.09
在庫有り

過日、娘の車に同乗して、全くの久しぶりに横浜の市街に出掛けてカメラ散歩をしてきた。関内駅近くに車を停めて、やゝ暫く歩いていくと伊勢崎町の路に突き当り、目を上げると、あれれ、青江三奈の巨きな顔看板がにっこりと笑っているではないか。やはり横浜と嬉しくなり数枚スナップをしていると、おやおや今度は向いの方から女の子の一団が賑やかにパレードをしてくるではないか。当然ウロチョロ写したわけだ。人通りも多くなり、立ち並ぶ街路のビルの更に彼方には「みなとみらい」の高層ビル群が林立していて、ぼくは、うーむヨコハマもしたたかに変貌を遂げているわけだ、とつくづく感銘する他なかった。
かつて、と言っても遠い昔のはなしであるが、当時よくぼくは、同じ逗子の町に住んでいた写友・中平卓馬と連日のように横須賀線に乗って、横浜経由の東横線で一緒に東京へと出掛けていた。そんな乗り換えのとき、ふとよく二人で横浜駅から桜木町あたりまで、単なる気まぐれのままふらついて、コーヒーなど飲みにカフェに入りびたったりしていた。そんなときぼくが、オレこの辺少し撮りたいかな?と彼に話しかけても、当時中平は、深夜の川崎港近辺の景色以外には全く興味を示さず、コーヒーを飲んでいても、やれゴダールがどうしたこうしただの、その頃彼がお気に入りだった歌手のミーナ・マッツィーニの唄を、ああだのこうだの、そんなことばかり嬉しそうに話してばかりだった。
それも、現在にして思えば、一緒に行った深夜の川崎港での撮り狂っていた彼の思い出と、その後横浜美術館に於ける彼の個展時の横浜での中平卓馬の姿以外には、ぼくに横浜での思い出は見つからない。
横浜のいまの景色は、ぼくにとっては少々気掛りである。折り折りに撮り続けて行こうかと思っている。

-森山大道 あとがきより