記録35+36号
11:00–19:00 [13:00–14:00 CLOSE]
日曜、月曜、祝日休廊
AKIO NAGASAWA GALLERY AOYAMAのグランドオープンを記念し、森山大道『記録35+36号』展を開催致します。
日常で撮ったものをすぐに焼いて、近くの人たちに手渡しで見せるという最小限のメディアをと模索する中、1972年に始められた森山大道の私家版写真誌『記録』。
翌年第5号をもって、一時休刊となりましたが、2006年に復活し現在も継続的に刊行されています。
今回は、2017年10月刊行の『記録35号』と同年12月刊行の最新作『記録36号』より、作品を展示致します。
会場では、下記の出版物を販売しております。
- 「記録36号」〜「記録30号」
- 「記録(Akio Nagasawa Edition)」
- 「Pretty Woman」
- 「あゝ、荒野」
(全てサイン入り)
アーティスト
森山大道
Daido MORIYAMA
1938年大阪生まれ。写真家・岩宮武二、細江英公のアシスタントを経て1964年に独立。写真雑誌などで作品を発表し続け、1967年「にっぽん劇場」で日本写真批評家協会新人賞受賞。1968-70年には写真同人誌『プロヴォーク』に参加、ハイコントラストや粗粒子画面の作風は“アレ・ブレ・ボケ”と形容され、写真界に衝撃を与える。
ニューヨーク・メトロポリタン美術館やパリ・カルティエ現代美術財団で個展を開催するなど世界的評価も高く、2012年にはニューヨークの国際写真センター(ICP)が主催する第28回インフィニティ賞生涯功績部門を日本人として初受賞。2012年、ウィリアム・クラインとの二人展「William Klein + Daido Moriyama」がロンドンのテート・モダンで開催され、2人の競演は世界を席巻した。2016年、パリ・カルティエ現代美術財団にて2度目の個展「DAIDO TOKYO」展を開催。2018年、フランス政府より芸術文化勲章「シュヴァリエ」が授与された。2019年、ハッセルブラッド財団国際写真賞受賞。
2021年、パリのMEP(ヨーロッパ写真美術館)にて東松照明との二人展「Tokyo: 森山大道+東松照明」を開催。2022年、アムステルダムやローマ、サンパウロ、北京で個展を開催するなど、現在も精力的に活動を行っている。
出版物
記録36号
11月上旬、ちょっとした用件で自宅の在る逗子の町に戻った。
年に二・三度帰るかどうかという逗子の町ではあるが、海岸や街路を車で過ぎるにつれて、ぼくの目の裏には今は亡き中平卓馬の若き日の姿が否応なくチラつきっ放しとなる。
それはそうだ、もう50数年もまえの夏の日々、朝に夕に終日ツルみ歩きつつ写真の夢ばかり語りつづけていた友人同士だったから。
-森山大道 後書きより
記録35号
今年6月、Akio Nagasawa Publishing から『Pretty Woman』というタイトルの写真集が出版された。ポップなデザインのハードカバー400ページ余りのボリューム、カラーとモノクロームが混然とする、いわばぼくの目線が見た東京俗物図鑑というわけである。
そして7月には、ロンドンの出版社Thames&Hudsonより一年越しの企画だった『記録』誌の1号から30号までの合本『RECORD』が出来上がって送られてきた。1972年にぼくの発想と手で5号までが作られ、その後長年休刊中だった『記録』誌が、2006年に長澤章生さんの要請によって6号から復刊され、以来いまこのコメントを記しているのが35号である。ロンドン刊の『RECORD』はすべてのページを入れると厖大なページ数になってしまうので、それなりにセレクトはされてはいるがそれでも相当なページ数である。
出来上がったばかりの上記2冊の写真集を同時に繰り返し見続けていると、ぼくはぼくの写真を見ながらも、なぜか見知らぬ光景を、不思議な世界を眺めているような思いに捉われてしまう。1972年に写した写真からも、2017年に写した写真からも、その間にあった時間のパースがふと失われて、印刷された2冊のすべてのイメージが急にフラットに映り見えてきたのだ。それは、ぼくという一人のカメラマンが写したものだから当然、などということではなくて、写真という複写装置が持つ一義的な記録性以外にある、もうひとつの作用というか現象のような気がするのだ。ぼくはそのとき2冊の写真集のページをめくりながら、今更ながら写真というツールの広さと深さを知る思いだった。
-森山大道 後書きより