新入荷、サイン入り
拝啓ニエプス様(Dear Mr. Niépce)
限定版/限定350部/サイン&ナンバー入/キャンバスにシルクスクリーン刷表紙
ぼくにとって、そして全ての写真家たちにとって、唯一の<聖地>だと呼べる所といえば、それは他ならぬフランス中部の小都市サン・ルゥ・ド・ヴァレンヌである。
かつて、この町のとある館の小窓に映った196年まえの夏景色が、ニセフォール・ニエプスという名の一科学者の“熱き想い”によって、人類最初の“写真”として写し撮られて、『実験室からの眺め』と題されたイメージが生まれたのであった。
そしてぼくは33年まえに「サン・ルゥへの手紙」というタイトルの写真集を出した。
その15年ほどあと、ぼくはその聖地、サン・ルゥ・ド・ヴァレンヌへと出掛けている。
さらにその数年あとに、ぼくはテキサス州(アメリカ)に行ってオースティン大学の資料館に展示されている、すでに映像も定かならない『実験室からの眺め』を目に留めてきた。
全てが光と影とによって構成された196年まえの一枚の風景は、その後長きに渡って、ぼくに向けて、静かなる衝動と、確かなる衝撃を与えつづけてくれているのだ。
この「拝啓ニエプス様」は、そんなぼくがサン・ルゥの実験室に出掛けて、ニエプス師のかつての仕事場のあれこれや、周辺の景色を写して廻ったスナップ(謹写)、そして窓からの眺めを写した一枚を中心として、ぼくが池袋の自室や自宅の周囲を撮ったイメージ達を一冊にしたものだ。
ニエプス師は大型の暗箱写真機で、ぼくはGパンのポケットに入るコンパクト・カメラで、やはりそのスケールが違うのだった。
-森山大道 あとがきより
- 判型
- 216 x 304 mm
- 頁数
- 104頁
- 製本
- ソフトカバー
- 発行年
- 2023.5.31
- 出版社
- Akio Nagasawa Publishing
森山大道
Daido MORIYAMA
1938年大阪生まれ。写真家・岩宮武二、細江英公のアシスタントを経て1964年に独立。写真雑誌などで作品を発表し続け、1967年「にっぽん劇場」で日本写真批評家協会新人賞受賞。1968-70年には写真同人誌『プロヴォーク』に参加、ハイコントラストや粗粒子画面の作風は“アレ・ブレ・ボケ”と形容され、写真界に衝撃を与える。
ニューヨーク・メトロポリタン美術館やパリ・カルティエ現代美術財団で個展を開催するなど世界的評価も高く、2012年にはニューヨークの国際写真センター(ICP)が主催する第28回インフィニティ賞生涯功績部門を日本人として初受賞。2012年、ウィリアム・クラインとの二人展「William Klein + Daido Moriyama」がロンドンのテート・モダンで開催され、2人の競演は世界を席巻した。2016年、パリ・カルティエ現代美術財団にて2度目の個展「DAIDO TOKYO」展を開催。2018年、フランス政府より芸術文化勲章「シュヴァリエ」が授与された。2019年、ハッセルブラッド財団国際写真賞受賞。
2021年、パリのMEP(ヨーロッパ写真美術館)にて東松照明との二人展「Tokyo: 森山大道+東松照明」を開催。2022年、アムステルダムやローマ、サンパウロ、北京で個展を開催するなど、現在も精力的に活動を行っている。