サイン入り
記録19号
サイン入
昨年の9月、イタリーのモデナ市で、大小400点余りのプリントによる個展を開催した。かつて大病院だったクラシカルな建築の内部全てはミュージアム・スペースに改装され、多様な空間での展示だった。1964年から2009年に亘ってぼくが写した写真を自選し、全て自らの構想に沿った壁面を作ってみた。展示を了えて、ほんの一瞬だけ、してやったりの感なきにしもあらずだった。
モデナでは、旧市街のホテルとミュージアムの間を3日間往き来してスケジュールをこなし、その道すがらでのスナップ撮影しかできなかったが、個展がオープンした2日後にフィレンツェへ足を延ばし、半日余りカメラを手に、あちこちの街区を撮り歩くことができた。
“街は過激にアートする”、ぼくの日頃の口癖であるが、古来アートの街として現在(いま)に至るフィレンツェでは、街中どこもかしこも、つい笑ってしまうほどアートだった。そんな街を、カメラでアートするほど野暮なはなしはないわけで、となればもう後は、ぼくのルーティーンワークであるスナップの出番だった。道行くオネエサンたちは、すこぶるセクシーだった。
-森山大道 あとがきより
- カートに入れる
- 判型
- 278 x 220 mm
- 頁数
- 72頁
- 製本
- ソフトカバー
- 発行年
- 2011
- 出版社
- Akio Nagasawa Publishing
森山大道
Daido MORIYAMA
1938年大阪生まれ。写真家・岩宮武二、細江英公のアシスタントを経て1964年に独立。写真雑誌などで作品を発表し続け、1967年「にっぽん劇場」で日本写真批評家協会新人賞受賞。1968-70年には写真同人誌『プロヴォーク』に参加、ハイコントラストや粗粒子画面の作風は“アレ・ブレ・ボケ”と形容され、写真界に衝撃を与える。
ニューヨーク・メトロポリタン美術館やパリ・カルティエ現代美術財団で個展を開催するなど世界的評価も高く、2012年にはニューヨークの国際写真センター(ICP)が主催する第28回インフィニティ賞生涯功績部門を日本人として初受賞。2012年、ウィリアム・クラインとの二人展「William Klein + Daido Moriyama」がロンドンのテート・モダンで開催され、2人の競演は世界を席巻した。2016年、パリ・カルティエ現代美術財団にて2度目の個展「DAIDO TOKYO」展を開催。2018年、フランス政府より芸術文化勲章「シュヴァリエ」が授与された。2019年、ハッセルブラッド財団国際写真賞受賞。
2021年、パリのMEP(ヨーロッパ写真美術館)にて東松照明との二人展「Tokyo: 森山大道+東松照明」を開催。2022年、アムステルダムやローマ、サンパウロ、北京で個展を開催するなど、現在も精力的に活動を行っている。