サイン入り
記録53号
サイン入
昨秋、写真家ウィリアム・クライン氏がパリで亡くなられた。
2012年、ロンドンのテート・モダン美術館で、ウィリアム・クラインとぼくの二人展が開催され、多くの人々に観て頂いた。ウィリアム・クラインの壁面は、写真はもとより、絵画作品、ムービー・フィルムなど多彩な構成で、いうまでもなく圧巻であった。一方ぼくの壁面は、ごく一部のカラー作品を除き、そのほとんどは大伸しのモノクローム・プリントをびっしりと張りめぐらせた構成であった。
ほゞ60年もまえ、あの衝撃的な写真集『NEW YORK』で思いっきり横っ面を張り倒されてぼくの写真人生が始まったわけで、とすればロンドンの二人展といえば、ぼくとしては、クラインに向けたモノクローム・プリントの氾濫以外に手はなかった。
そしてぼくは、大きな車椅子に乗って、その巨きな姿を現わしたクライン氏と久方ぶりに再会して、どちらからともなく握手を交わしていた。もうこのひとときの時間の内に、そして、二人展が始まったばかりにもかかわらず、もうオレの二人展は終ったも同然と云いたいほどの感懐が心中を満たしていた。(後略)
-森山大道 あとがきより(一部抜粋)
- 判型
- 280 x 210 mm
- 製本
- ソフトカバー
- 頁数
- 122頁
- 発行年
- 2023.1.31
- 出版社
- Akio Nagasawa Publishing
森山大道
Daido MORIYAMA
1938年大阪生まれ。写真家・岩宮武二、細江英公のアシスタントを経て1964年に独立。写真雑誌などで作品を発表し続け、1967年「にっぽん劇場」で日本写真批評家協会新人賞受賞。1968-70年には写真同人誌『プロヴォーク』に参加、ハイコントラストや粗粒子画面の作風は“アレ・ブレ・ボケ”と形容され、写真界に衝撃を与える。
ニューヨーク・メトロポリタン美術館やパリ・カルティエ現代美術財団で個展を開催するなど世界的評価も高く、2012年にはニューヨークの国際写真センター(ICP)が主催する第28回インフィニティ賞生涯功績部門を日本人として初受賞。2012年、ウィリアム・クラインとの二人展「William Klein + Daido Moriyama」がロンドンのテート・モダンで開催され、2人の競演は世界を席巻した。2016年、パリ・カルティエ現代美術財団にて2度目の個展「DAIDO TOKYO」展を開催。2018年、フランス政府より芸術文化勲章「シュヴァリエ」が授与された。2019年、ハッセルブラッド財団国際写真賞受賞。
2021年、パリのMEP(ヨーロッパ写真美術館)にて東松照明との二人展「Tokyo: 森山大道+東松照明」を開催。2022年、アムステルダムやローマ、サンパウロ、北京で個展を開催するなど、現在も精力的に活動を行っている。