サイン入り
YODAKA
サイン入
1970年代末頃までには、日本の戦後復興の暄騒や学生運動、国際社会を揺るがせたテロなど一連の運動も一段落していました。
1980年代前半のやや落ちついたこの雰囲気も、長かった昭和の時代が終わりを迎え、この後まもなく怒涛のように押し寄せてくる日本のバブル経済前夜の、束の間のものでした。
さらに進んでいく西洋化に加え、近代昭和と現代昭和(戦前、戦後)が混在するこの東京の現実は、ゆったりとした伝統的なフランドル文化の中での4年間の留学を終えて、1980年に日本に戻った私にとって、視覚的には捉えようの無い無秩序なものに思えました。
自国で自分の表現を実現したいとあがいていた私は、このカオスを避けるように、昼間の喧騒の消えた夜の光りを追うことから開始しました。
-2015年、柴田敏雄
- 判型
- 302 x 384 mm
- 頁数
- 48頁
- 掲載作品
- 41点
- 製本
- ハードカバー、スリップケース入
- 発行年
- 2015
- 出版社
- ZEN FOTO GALLERY
柴田敏雄
Toshio SHIBATA
1949年東京生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科絵画専門課程油画専攻(修士課程)修了。75年にベルギー文部省より奨学金をうけ、ゲント市王立アカデミー写真科入学。80年頃より写真を始める。
大型カメラを使用して撮影された写真は、精密で緊張感のある画面構成を特徴とし、人工物と有機物が織りなす造形美がピクチャレスクに描き出されています。自然の中に人工物が入り込んだ不可思議な風景をダイナミックに捉えた作品は、社会的・政治的側面を反映しつつも、文明の発達とともに変わりゆく時代の風景を独自の造形的感覚で捉えたものとなっています。
シカゴ美術館での「Toshio Shibata」展をはじめ、東京都写真美術館「ランドスケープ」展、国立新美術館『与えられた形象 辰野登恵子/柴田敏雄』など、国内外で多数個展を開催。92年第17回木村伊兵衛賞受賞、09年日本写真協会賞作家賞、第25回東川賞国内作家賞受賞。主な写真集に『LANDSCAPE』(96)、『DAM』(04)、『a View』『For Grey』(09)、『Concrete Abstraction』(15)など。